EXCELによる最長片道ルート探索

4. JR最長片道ルートの計算

(2)新幹線を含まない最長片道ルート

かつて、新幹線は在来線の線増であり、営業キロも全く同じであるし、独立した路線ではないという認識があった。それで、最長片道ルートも新幹線を完全に外した計算が行われていたことがある。長野新幹線、九州新幹線、東北新幹線(盛岡−八戸)の開業により、信越本線、鹿児島本線、東北本線が分断されてしまった今日では、新幹線抜きの最長片道ルートは今一つ迫力がないが、ここでは、その伝統的な新幹線抜きの最長片道ルートを求めてみることにする。

基本的には新幹線も含めたものに、新幹線の区間の変数H(a,b)が全て0であるという制約を付け加えれば良い。ここで、国府津・沼津間が途中接続駅なしの2ルート(東海道本線と御殿場線)となるので、距離の長い御殿場線経由のみ残し、東海道線側のH(a,b)は全て0の制約を追加することにする。

以上の修正を行い、(1)と同様の計算を行うと次のようになった。

図26-0

前回と同様、東北地方の最大値となる「福島」のケースと西日本地方の最大値となる「美濃太田」の組み合わせで東日本地方の最大値を求め、これを暫定的な全体最大値の候補とする。次に、接続部の枝数によってケース分けした上で、東日本地方について部分巡回禁止制約のない無制約最大値を計算すると上表○部分が計算不要となった。

なお、東北地方と東日本地方の3つの接続ルートを全て通過する場合、福島−郡山−(東日本地方)−いわき−岩沼−(東北地方)−福島の部分巡回ルートを回避するための制約式は、東日本地方側で制約を課すケースと東北地方側で制約を課すケースを考える必要があるので、事前に東北地方で制約を課すケースを、「全区間(1)」「全区間(2)」に場合分けしておくことにした。
「全区間(1)」は東北地方側で福島と岩沼が繋がっているケースで、この場合、上記部分巡回ルートを回避するには、東日本地方で、例えばH(郡山,いわき)=0などの制約を課す必要がある。
「全区間(2)」は東北地方側で福島と坂町が繋がっているケースで、この場合、上記部分巡回ルートは東北地方側で回避されているので、東日本地方で郡山といわきが繋がっていても追加制約は不要となる。
このように事前に場合分けしておけば、東日本地方を計算する際に東北地方側を気にしながら計算する必要がなくなるので計算しやすくなるだろう。

これらを踏まえて、上表○部分以外の9ケースについて個別計算の結果、上表のように、「福島」「名古屋」のケースが、オリジナルの「福島」「美濃太田」のケースよりも全体合計値が上回ったため、「福島」「名古屋」のケースが最長片道ルートであることが示された。

この最長片道ルートを図26-1〜図26-3に示しておく。このルートの西日本地方は金山から紀勢本線を通って大阪に出た後、一旦日本海岸を富山まで戻り、今度は内陸を通って大阪地区を東西線で通り抜けるようになっている。東西線は大阪を通らないのでこういう芸当ができるのだが、ここまで捩れたルートは今まで見たことがない。なかなか面白いルートである。

また、今回の計算では途中で最長ルート候補の組合せが入れ替わっている。最終解以外のルートを図示していないので追加説明しておくが、西日本の「名古屋」のケースと「美濃太田」のケースの違いは、名古屋−岐阜(30.3km)を通過するか美濃太田―岐阜(27.3km)を通過するかの違いだけであり、東日本で初めに最長候補となった3075.1kmと最終的に最長ルートとなった3093.5kmの違いは、多治見−美濃太田(17.8km)を通過するか多治見−金山−名古屋(36.2km)を通過するかの違いだけである。つまり、多治見−美濃太田−富山…亀山−名古屋−岐阜…よりも、多治見−金山−名古屋−亀山…岐阜−美濃太田−富山の方が、15.4km(=(36.2+27.3)−(17.8+30.3))だけ長いということである。

図26-1
図26-1


図26-2
図26-2


図26-3
図26-3




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初版: 2005年2月12日 最終更新: 2005年7月17日