補6. 2010年3月版最長ルート

本編では、JRは2004年3月の九州新幹線新八代-鹿児島中央開業、上越新幹線本庄早稲田駅開業まで、東京メトロは2003年3月の半蔵門線押上延長開業までを反映して最長ルートを計算した。その後、6〜7年間経過したので、今回、その間の路線改変等を反映して改めて計算をやり直してみることにした。新たに考慮した項目は次の通りである。


なお、本編を掲載して以降、インターネット上では、JR最長片道ルートのみならず、東京近郊区間や東京メトロについても、最長大回りルートを独自に計算した事例が見受けられるようになってきた。
again@T氏による研究では、東京近郊区間や東京メトロの初乗り最長大回りルートをはじめとして、Suica/PASMO初乗り最長大回りや都営地下鉄、大阪近郊区間、大阪市営地下鉄、福岡近郊区間等の初乗り最長大回りルートが計算されている。 また、again@T氏による研究の中でも引用されているが、よねざわいずみ氏は、東京近郊区間について、 特定分岐区間の複乗を考慮した最長ルートが計算しており、この場合の最長ルートは通常の初乗り最長大回りルートとは全く別ルートになることが報告されている。



(1)新幹線を含む通常の最長片道ルート

新幹線を含む通常の最長片道ルートについては、和歌山線改キロとおおさか東線開業の影響はなく、西日本は前回と同じルートとなった(距離は、和歌山本線改キロ分の0.4kmの減少)。一方、東日本のルートは、横須賀線武蔵小杉駅開業により変わったが、変化はごく局所的なものであった。具体的には、府中本町−尻手−川崎−(横須賀線)−鶴見だったのが、府中本町−武蔵小杉−品川−川崎−尻手−浜川崎−鶴見に変わり、距離が3.8km短くなった。

計算結果は表A6-1の通り、最長片道ルートは図A6-2の通りである。

表A6-1
表A6-1

図A6-2-1
図A6-2-1
図A6-2-2
図A6-2-2
図A6-2-3
図A6-2-3




(2)新幹線を含まない最長片道ルート

新幹線を含まない最長片道ルートについては、和歌山線改キロの影響によるルート変更はなかったが、おおさか東線開業により西日本のルートが変わった。以前は名古屋から紀勢本線を通って大阪に出た後、一旦日本海岸を富山まで戻り、今度は内陸を通って大阪地区を東西線で通り抜けるルートであったが、今回は、大阪に出る前におおさか東線で東に転進し、高山本線で南から富山に入り、日本海岸を通って大阪に出るルートとなった。
また、横須賀線武蔵小杉駅開業により、品川−川崎−尻手−浜川崎−鶴見だったルートが、品川−川崎−尻手−武蔵小杉−鶴見に変わった。
これらの変動により、西日本は5.0km、東日本は3.8km長くなり、合計で8.8kmの増加となった。
計算結果は表A6-3の通り、最長片道ルートは図A6-4の通りである。

表A6-3
表A6-3

図A6-4-1
図A6-4-1
図A6-4-2
図A6-4-2
図A6-4-3
図A6-4-3




(3)本州循環型最長片道ルート

本州循環型最長片道ルートについては、和歌山線改キロ、おおさか東線開業、横須賀線武蔵小杉駅開業のいずれも、ルートには影響を与えず、以前までのルートが最長ルートとなった。本州循環型最長片道ルートは、もともと南武線を南下してから西方向に進む府中本町−尻手−浜川崎−鶴見というルートであり、品川へは新横浜から東海道新幹線で接続していたので、武蔵小杉駅から横須賀線を使ってもルートを伸ばすことはなかったようである。
計算結果は表A6-5の通りである。最長片道ルートは以前と同じなので掲載を省略する。

表A6-5
表A6-5




(4)東京近郊区間130円切符の最長大回りルート

2009年3月より東京近郊区間は大幅に拡大し、房総半島の全線を含むようになった。
以前までの房総半島周辺の東京近郊区間初乗り最長大回りルートは、我孫子−成田−佐倉−成東−大網−蘇我というものであった。今回の拡大により、一見、これが、我孫子−成田−松岸−成東−大網−安房鴨川−蘇我に置き換わるだけのように思われるが、そうはならなかった。
まず、東京近郊区間を循環する最長片道ルートを計算したところ、距離は1018.4kmとなった。一方、ルートの方は、房総半島へのアプローチが大きく変わり、西船橋−千葉−佐倉−成田−松岸−成東−大網−安房鴨川−蘇我となった。我孫子から房総半島に入って千葉から出ていたのが、千葉から入って蘇我から京葉線で東京に抜けるようになったのである。
房総半島への出入口が変わった影響で、房総半島以外のルートも大きく変わることになった。そこで、「4方向以上の路線が集まる分岐駅を2箇所切断するパターン」を計算したところ、このパターンの最長片道ルートは新松戸を分岐駅として選定する場合の馬橋−北小金となり、距離は1038.3km−2.9km(馬橋-北小金間最短距離)=1035.4kmとなった。
一方、「循環経路を「切断」し、さらに「髭」をつけるパターン」の方は、切断区間はどんなに短くても0km以下にはならないし、髭はどんなに長くても3km以上にはならないので、1018.4km+3km=1021.4kmよりも長くなることはない。
この結果、「4方向以上の路線が集まる分岐駅を2箇所切断するパターン」の方が、循環経路を「切断」し、さらに「髭」をつけるパターン」よりも距離が長くなることが分かった。
馬橋−北小金の最長大回りルート及び東京近郊区間を循環する最長片道ルートを図A6-6、図A6-7に示しておく。

図A6-6
図A6-6

図A6-7
図A6-7

なお、「4方向以上の路線が集まる分岐駅を2箇所切断するパターン」を計算するにあたっては、4方向以上の路線が集まる分岐駅で、かつ切断箇所が3km以内の130円区間となる駅を最長片道ルートの候補として選定する必要があるが、以前はこれに該当する駅は新松戸のみであった。
今回の横須賀線武蔵小杉駅開業により、武蔵小杉も4方向以上の路線が集まる分岐駅となった。かつ、向河原−武蔵中原が2.6kmなので、切断箇所が3km以内の130円区間となる駅にも該当することになった。
そこで、「4方向以上の路線が集まる分岐駅を2箇所切断するパターン」については、新松戸と武蔵小杉を候補として計算したが、その結果、新松戸を採用した馬橋−北小金の方が長くなった。
また、4方向以上の路線が集まる分岐駅を2箇所切断するパターンの亜種」(代々木・新宿をひとまとまりと見た場合の「千駄ヶ谷発新大久保着:130円」など)も検討したが、馬橋−北小金より長くなることはなかった。



(5)東京メトロ160円切符の最長大回りルート

東京メトロ160円切符の最長大回りルートについては、副都心線池袋-渋谷の開業により、池袋での乗り換えの選択肢が増加すると共に、新宿三丁目、明治神宮前、渋谷が新たな接続駅となるため、これにより最長大回りルートが大幅に変わることは想像に難くないだろう。
今回、これを計算するために、前回までのEXCELワークシートに次の修正を施した。

これらを修正して計算した結果、最長ルートは「本郷三丁目−西ヶ原63.6km」となった。起点と終点は前回と同じだが、距離は6.0km長くなった。
ルートは次の通りである。(*はラッチ外乗換えを表わす。)
本郷三丁目(丸の内線:1.6)*淡路町・新御茶ノ水(千代田線:8.6)北千住(日比谷線:5.8)*仲御徒町・上野広小路(銀座線:3.0)日本橋(東西線:0.5)茅場町(日比谷線:2.5)銀座(銀座線:4.5)青山一丁目(半蔵門線:6.1)大手町(千代田線:1.4)日比谷(日比谷線:1.2)霞ヶ関(千代田線:4.1)表参道(半蔵門線:1.3)渋谷(副都心線:3.6)新宿三丁目(丸ノ内線:2.6)四ッ谷(南北線:1.0)市ヶ谷(有楽町線:6.0)*池袋(丸の内線:4.8)後楽園(南北線:5.0)西ヶ原

図A6-8
図A6-8

なお、副都心線開業の影響で、距離の設定が必要な区間が142区間となり、前回より12区間増加すると共に、起点駅・終点駅のダミー変数の設定が必要な駅が116駅となり前回より9駅増加した。一方、EXCELのソルバーでは変化させるセルが200個までしか設定できないため、起点駅・終点駅のダミー変数は1回の計算で200-142=58、つまり、起点駅・終点駅それぞれ58の半分の29ずつしか設定できないことになる。従い、全ての起点駅・終点駅の組合せを確認するためには、起点駅・終点駅のダミー変数を116÷29=4分割して4×4=16通りの組合せを計算する必要がある。実際に計算を始めてみると、これが非常に手間のかかる計算で、起点駅・終点駅に本郷三丁目・西ヶ原を含むブロックではすぐに答えが出るのだが、それ以外のブロックでは計算に非常に時間がかかることが分かった。本郷三丁目−西ヶ原は63.6kmと長いので、他の比較すべき候補が限定され、すぐに答えが出るようなのであるが、どうも61km〜62km辺りでは非常に多くの選択肢があってなかなか答えが出ないようであった。そこで、今回の計算では、毎回のブロック毎の計算で設定する起点駅・終点駅ダミー変数に常に本郷三丁目・西ヶ原を含めて、つまり、1回の計算で設定する新規のダミー変数は起点駅・終点駅それぞれ29より1少ない28ずつとし、全ての回で本郷三丁目・西ヶ原が最長になるかどうかを確認するという方法をとった。



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初版: 2010年2月25日 最終更新: 2010年2月25日