補1. 東京近郊区間130円切符の最長大回りルート
EXCELによる最長片道ルート探索4.(4)では、東京近郊区間循環型の最長ルートを求めたが、「このルート上の130円区間で切って、逆周りに回れば」、130円切符で行ける大回りルートにはなるが、実はこれでは、最長ルートにはならない。
わらしべ長者町氏によれば、東京近郊区間130円切符の最長大回りルートは、「上野発西日暮里着」であるとしている。このルートの循環経路部分は4.(4)のルートと同じだが、循環経路の「日暮里-西日暮里:0.5km」が切断され、「上野-日暮里:2.2km」の髭がついている。「日暮里-西日暮里:0.5km」+「上野-日暮里:2.2km」=2.7qなので、「上野発西日暮里着」は、最短距離で3kmまでの切符である130円切符で乗車可能である。
そこで、この章では、東京近郊区間130円切符の最長大回りルートが「上野発西日暮里着」になるのかどうかを、いくつかのパターンに分けて確認してみたいと思う。
(1)循環経路を「切断」し、さらに「髭」をつけるパターン
循環経路の切断部分の距離をx、追加の髭の距離をyとする。yはなるべく長く、xはなるべく短くすれば良いので、y-xをなるべく長くすればよい。
そこでまず3方向以上の路線が集まる分岐駅の、隣接駅までの距離を調べる(表A1-1)。この距離の短い所が、切断部分の候補となる。
表A1-1
最も短いものの1つが、「日暮里-西日暮里」の0.5kmである。これは4.(4)の循環経路上にあるので、切断する対象として、この循環経路がそのまま使える。(最短の切断区間が4.(4)の循環経路上にない場合は、その切断区間を通過するという追加条件の下での最長循環経路を改めて求め、他の候補と比較する必要がある。4.(4)の循環経路上にない浅野-安善0.5qについて後述。)
「日暮里-西日暮里:0.5km」を切断した時、追加の髭は「上野-日暮里」の2.2kmが最長となる。これが、わらしべ長者町氏のルートである。
この時、y-x=2.2-0.5=1.7となるので、以下で、y-x>=1.8の経路があるかどうかを探すことにする。
y-x>=1.8よりy>=1.8+x、また、x+y<=3よりy<=3-xなので、3-x>=1.8+x、即ち、x<=0.6となる分岐駅があれば、上記経路より長いものが存在する可能性がある。
そこで、電車特定区間内(それ以外は初乗り140円となってしまう)で、3方向以上の路線が集まる分岐駅全て(大宮、我孫子、千葉、西船橋、南船橋、市川塩浜、東京、錦糸町、秋葉原、神田、御茶ノ水、代々木、新宿、池袋、田端、日暮里、新松戸、南浦和、赤羽、武蔵浦和、西国分寺、立川、府中本町、尻手、川崎、品川、鶴見、東神奈川、横浜、大船、橋本、八王子、拝島、浅野、武蔵白石、浜川崎)について、循環経路上の隣駅までの距離が0.6km以下になるところがあるかどうかを調べる。
表A1-1を見ると、隣接駅までの距離が、0.6km以下のところは、浅野-安善0.5q、浅野-弁天橋0.6km、武蔵白石-安善0.6qの3箇所のみである。いずれも鶴見線内で、4.(4)の循環経路上にない。そこで、鶴見-鶴見線-尻手を必ず通過するという制約条件を追加して最長循環経路を求めると、4.(4)の循環経路より6.0q短い765.5qとなった。この経路を切断し、髭をつけても、130円切符では髭の長さは3q未満にしかならないので、この3箇所の切断が最長となる可能性はないことが分かる。従って、循環経路を「切断」し、さらに「髭」をつけるパターンでは、「上野発西日暮里着」が最長となる。
なお、2番目に長い経路は「川崎新町発矢向着」で、循環経路の切断部分「尻手-矢向」が0.9km、「尻手-川崎新町」の髭が2.1km、y-x=2.1-0.9=1.2となる。
秋葉原-神田0.7km、代々木-新宿0.7km、田端-西日暮里0.8km、御茶ノ水-水道橋0.8kmで切断するケースは、切断部分は尻手-矢向より短いが、髭の距離が余り長く取れないため、y-xで比べた時、「川崎新町発矢向着」には及ばなかった。
(2) 4方向以上の路線が集まる分岐駅を2箇所切断するパターン
例えば、「国立発西国立着」とした場合、国立-西国分寺 … 高麗川-拝島-八王子-橋本 … 川崎-西国立の循環ルートが立川を通らないので、図A1-2の赤線のように、「拝島-八王子」を「拝島-立川-八王子」と立川経由にして距離を伸ばすことができる。この方が、枝を追加するより長そうである。
図A1-2
が、このケースでは、国立-西国立は4.2kmなので、130円区間にはならない。
そこで、立川のような4方向以上の路線が集まる分岐駅で、2本を切断して2つの隣駅を起終点とするケースで、130円区間となるものがあるかどうか探してみる。
対象駅は大宮、武蔵浦和、南浦和、赤羽、日暮里、秋葉原、東京、立川、西国分寺、鶴見、品川、新松戸、西船橋で、切断前(つまり、対象駅のみ4路線、その他の接続駅は2路線または0路線が通過するという制約条件で最長経路を求めた)で、オリジナルの循環経路771.5kmより長いケースは、大宮779.0km、赤羽783.7km、立川778.4km、西国分寺774.8km、鶴見783.1km、品川779.6km、新松戸774.3km、西船橋780.5kmの8ケースであった(表A1-3)。
表A1-3
この中で、130円区間があるのは、新松戸だけで、経路は「馬橋発北小金着」(馬橋-日暮里-田端-池袋-新宿-代々木-御茶ノ水-神田-秋葉原-錦糸町-東京-京葉線-蘇我-大網-成東-佐倉-千葉-西船橋-新松戸-南浦和-以下オリジナル循環ルートと同じ-友部-我孫子-北小金)、距離は774.3km-2.9km(馬橋-北小金間最短距離)=771.4kmであった(図A1-4)。
図A1-4
これはオリジナル循環経路771.5qより0.1km短いので、結局、オリジナルより1.7km長い「上野発西日暮里着」の方が長いことが分かる。
(3) 4方向以上の路線が集まる分岐駅を2箇所切断するパターンの亜種
「4方向以上の路線が集まる分岐駅で、2本を切断して2つの隣駅を起終点とするパターン」の亜種として、代々木・新宿をひとまとまりと見れば、「千駄ヶ谷発新大久保着:130円」が考えられる。
同様に、「秋葉原・御茶ノ水」「秋葉原・神田」「神田・東京」「神田・御茶ノ水」の組合せでひとまとまりと見ることができる。
そこで、「ひとまとまりと見ることができる2駅」は3路線、その他の接続駅は2路線または0路線が通過するという制約条件で最長経路を求めた。
しかし、上記のいずれの組合せも、循環ルート+1.7km 以上にはならず、結論としては、これも、「上野発西日暮里着」より長くはならないことが分かった(表A1-5)。
表A1-5
(4)完全に一周するケース
秋葉原-神田-御茶ノ水-秋葉原は2.9kmなので、秋葉原-秋葉原が130円区間となり、オリジナル循環ルートを文字通り一周することができる。しかし、当然のことながら、これよりも「上野発西日暮里着」の方が長い。
以上の通り、(1)〜(4)の全てのパターンの中で、「上野発西日暮里着」が東京近郊区間130円切符の最長大回りルートであることが分かった。
ただし、上記(1)〜(4)で本当に全てのケースを網羅しているのかどうかはまだ証明できておらず、今後の課題となっている。
(注)わらしべ長者町氏は「上野発西日暮里着」は776.1qとしているが、上記の計算では、771.5q−0.5q+2.2q=773.2qとなり、2.9qの差がある。これは、川崎-西大井-鶴見について、わらしべ長者町氏が正確な営業キロ17.8qを使用しているのに対し、このウェブページでは、特定運賃計算キロ14.9qを使用してしまっているためである。
更新記録
・ 2005年3月8日 : 表A1-1で鶴見線の分岐駅各駅が脱漏していたため追加訂正。あわせ、本文も訂正。
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初版: 2005年2月27日 最終更新: 2005年3月8日