補2. 東京近郊区間150円切符の最長大回りルート

130円切符の場合は、循環経路を「切断」し、さらに「髭」をつけるパターンが最長となった。次に150円切符の場合はどうなるかを考える。150円切符は6qまでの切符である。



この場合は、4方向以上の路線が集まる分岐駅を2箇所切断するパターンが最長になりそうである。付1.の表A1-3によれば、このパターンの最長片道ルートは赤羽を4方向以上の路線が集まる分岐駅に設定するケースで、780.5qとなり、オリジナルの循環経路771.5kmより9.0q長い。

ところが、これは切断距離を単純に最短に設定(表A1-1の赤羽の行を見ると、赤羽-北赤羽1.5q、赤羽-東十条1.8qを切断するのが最短である)した場合の距離であり、この切断の場合、実際には、図A2-1の赤線で示した通り部分巡回経路が含まれていることが分かる。

図A2-1
図A2-1

切断箇所を赤羽-北赤羽・赤羽-東十条に固定して、この部分巡回経路を排除すると、表A2-2の1行目に記しているように、片道ルート距離は779.5kmとなる。

表A2-2
表A2-2

表A2-2の2〜4行目は、切断距離が短い順に片道ルート距離を調べたものである。赤羽を分岐駅とする切断前の最長循環ルートをそのまま活用できる切断(赤羽-北赤羽・赤羽-川口)は、切断距離が短い方から4番目にあたるが、この片道ルート距離は779.6qとなり、これが最長となっていることが分かる。このルートを図A2-3に示す。

図A2-3
図A2-3

ここからは解釈の問題となるが、図A2-3では、ルートが赤羽-尾久-日暮里-新松戸を通過しているが、尾久経由の高崎線・東北本線は日暮里に停車しないので、実際にこのルートを辿ろうとするなら、赤羽-尾久-日暮里-上野-日暮里-新松戸と日暮里-上野間を複乗しなければならない。これは問題あり、とする向きもあるかもしれない。 (追記1参照)


図A2-4
図A2-4

表A2-2の1行目のルート779.5kmを図A2-4に示すが、こちらは、上記の尾久問題は発生していない。日暮里-上野間の複乗を不可とする場合は、こちらのルートが最長となる。

また、表A2-2の5行目以降に示したように、4方向以上の路線が集まる分岐駅を、鶴見、品川に設定する場合も、切断距離最短となるケースが単純に最長とはならず、むしろ、各駅を分岐駅とする切断前の最長循環ルートをそのまま活用するケースの方が最長となっていることが分かる。

これらの結果を整理して、表A1-3を改訂したものを表A2-5に示す。 (追記3参照)

表A2-5
表A2-5


次に、「4方向以上の路線が集まる分岐駅を2箇所切断するパターン」以外のケースを考える。 (追記2参照)

以上により、東京近郊区間150円切符の最長大回りルートは、赤羽を4方向以上の路線が集まる分岐駅に設定する「北赤羽発川口着」または「北赤羽発東十条着」(尾久問題を回避する場合)が最長となることが分かった。



追記1(2005/3/6)
デスクトップ鉄氏より、東京近郊区間大回り乗車中でも、日暮里-上野の複乗は可能との情報頂きました。

「尾久を経由することによる日暮里-上野間の複乗の問題ですが、これは旅客営業取扱基準規定(旅基)で認められています。日暮里-上野間の区間外乗車は、旅基第149条に定められていますが、下記のとおり
(特定の分岐区間に対する区間外乗車の取扱いの特例)
第149条  次の各号に掲げる各駅相互間発着(規則第157 条第2項の規定により当該区間を乗車する場合を含む。)の乗車券を所持する旅客に対しては、当該各号の末尾かつこ内の区間については、途中下車をしない限り、別に旅客運賃を収受しないで、乗車券面の区間外乗車の取扱いをすることができる。
となっていて、旅客営業規則第157条第2項の大都市近郊区間の選択乗車についても適用されます。」


追記2(2005/3/6)
「4方向以上の路線が集まる分岐駅を2箇所切断するパターン」以外に検討が必要なケースとして、「6の字ルート」もあることが分かった。(デスクトップ鉄氏より御指摘あったもの)
「6の字ルート」の場合、循環最長ルートを切断せずに、髭の部分だけを伸ばすことができる。ただし、伸ばせる髭は、どんなに長くても、6q未満しか長くならないため、北赤羽−川口間(循環最長ルート+8.1q)を上回ることはない。
なお、「6の字ルート」による最長大回りは、鶯谷−秋葉原−神田−御茶ノ水−秋葉原(5.6q)という乗車券で、秋葉原−神田−御茶ノ水−秋葉原にかえて循環最長ルートを迂回するもので、距離は最長循環ルート+2.7q(鶯谷−秋葉原)となる。

追記3(2005/3/6)
結論は変わらないが、「8の字ルート」(大きな円の中に小さな円が一点で接しているケースを含む)の最長ルート、2番目のルート、3番目のルート … を求めてから、各ルートでの切断距離を算出する、という方法で再計算してみた。(デスクトップ鉄氏より御指摘あったもの)(表A2-7参照)
(注)今回は、赤羽-尾久-日暮里と品川-新川崎-鶴見を、特定運賃計算キロではなく、営業キロを用いて計算した。特定運賃計算キロを用いた場合についても付記している。

表A2-7
表A2-7

「8の字ルート」の最長ルートを求めるには、4方向以上の路線が集まる分岐駅すべてに、0または1をとるダミー変数を設定し、
  ダミー変数の合計<=1
とし、
また、ダミー変数を設定した分岐駅について、
  ΣH(当該分岐駅に接続する枝に設定した0または1をとる変数Hの合計)<=2
にかえ、
  ΣH−(ダミー変数×2)<=2
の制約を追加して計算した。
やはり、「8の字ルート」の最長ルートは赤羽を交点とするもので、最適な切断区間は「北赤羽-川口」となった。

「8の字ルート」は何番目まで求める必要があるか?であるが、「北赤羽-川口」4.1qと最短切断距離「馬橋-北小金」2.9qとの差が1.2qなので、「最長8の字との差」が1.2q以上になるまで、つまり5番目のルートまでを求めれば十分である。

また、2番目のルートは、部分巡回ルートを排除する時と同様に、
  最長ルート上の枝のH(0または1をとる変数)の和 <= 最長ルート上の枝数 − 1
という制約を追加して求めた。
3番目以下の、n番目のルートについても、同様に、
  n-1番目のルート上の枝のHの和 <= n-1番目のルート上の枝数 − 1
という制約を次々追加して求めた。

結論としては、表A2-7の1行目の赤羽を交点とした北赤羽-川口が、大回り片道距離としても最長となる。大回り片道ルートで見た場合、2行目と3行目の順位が逆転しているのが面白い。



更新記録
 ・ 2005年6月21日 : 「部分巡回」「部分循環」を「部分巡回」に用語統一。



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初版: 2005年2月27日 最終更新: 2005年6月21日